七夕パニック



 今日は七夕。私は俗に言う織姫と言うやつで、年に一回
彦星様に会えるこの日を楽しみにしていた。私も今年で15才。
恋愛の一つや二つはしてもいい年だ。
 彦星様との出会いの予感を胸に抱きながら天の川へと急ぐ。



 天の川に到着するとすでに彦星様は待っていてくれていた。胸が
高鳴る。が、もしも彦星様がビックリするくらいの不細工だったらどうしよう。
 ドキドキしながら声を掛ける。
「あのー彦星様?お待たせしました。織姫です。」
 彦星様はくるりと振り返る。黒い髪に長髪で眼鏡の彦星様だ。
正直、彦星なのに眼鏡はどうかと思うが、カッコいいからチャラだ。
「お、可愛い織姫で良かったわ、俺は忍足侑士や、よろしゅう。」
 関西弁?どんな彦星やねん。関西弁で突っ込んでる場合じゃない。呆然としていると
関西弁の彦星様の後ろからワラワラと人が湧いて出てきた。
「おい、忍足。テメエの自己紹介だけしてんじゃねえよ。どけ。」
 茶髪でツリ目で泣きボクロの彦星様?が自己紹介を始めた。
「俺様の名前は跡部景吾だ、覚えておけ。お前の名前は?」
「あ、です。」
 偉そうな彦星…っていうか、跡部さんはいい名前じゃねーか、お前にピッタリだ。
とか言っている。
「あ、俺、鳳長太郎です。こっちの寝てるのが芥川慈郎さんです。」
「ヨロシクー。」
「越前リョーマ。」
「僕は不二周助だよ、よろしく。」
「オレは菊丸英二だにゃ。」
「千石清純。キヨって呼んで欲しいな。」
「…亜久津。」
「観月はじめです、んふ。」
「榊だ。」

 何なんだろう。いくら何でも多すぎだろう。何でこんなに彦星がいるんだろう。
何かもう皆カッコよくて選べない。いや、誰も私に選べとか言ってないけれど。
「もちろん、俺様とデートだよな?」
「いや、俺やろ。」
「あの、良ければ俺と…。」
「俺と一緒ならたのCよ?」
「お山の大将達は黙っててよ。俺だよね?」
「僕じゃ嫌かな?」
「俺、今日恋愛運良いんだよなー。」
「行くぞ。」
「僕ですよね?」
「私を選べ。」

 選べとか言われた。もてすぎだろう、私。シチュエーション的に美味し過ぎる。
ドッキリとかなら納得だけど…。
「あの…。ドッキリカメラか何かですか?」
 一番近くに居た忍足さんに声を掛ける。忍足さんは微笑みながら質問に答えてくれた。
「他の連中はどうか知らへんけど、俺はマジやから。」
 忍足さんが真面目な面持ちで口説く。星やら何やらに照らされて綺麗だ。
「抜け駆けしてんじゃねえよ。俺様だってお前にマジだぜ?」
 このままではまた全員に口説かれると判断した私は先手を打った。
「あ、はい。皆さんが本気だって言うのは分かりましたが、急に言われても…。」
 しかしコレが不味かった。気付くと有無を言わさず跡部さんにキスされていた。触れる
だけだけど、長くて濃厚なソレは私の意識を遠くに飛ばすのに充分だった。
「俺様を選べ。イイ所に連れてってやるぜ?」
 つい頷きそうになってしまう。が、どうにか思い留まった。キスに釣られるなんて情けなさ過ぎる。
 と、他の人たちも動き出した。かわるがわるキスをされ、最後にキスした人と唇が離れた時には
意識は遥か彼方へ飛んで行ってしまった。
、誰にするん?」
 ………。考えた末、私は逃げる事にした。こんな人達と付き合っていたら身が持たない。
「ごめんなさいっ!!」
 私は持てる力の全てで走り。追いかけて来る人たちを撒いた。



 はっ!!目覚めるとどうやら今までの事は夢だったらしく、私はベッドに寝ていた。そうか、
やっぱり夢か。あー良かった。あんな美味しい事があるわけが無い。安心しながらベッドを降りる。
「あれ、いつの間に起きたの?」
 茶髪で軽く長髪の彦星様…。不二さんが顔を覗き込んできた。夢…じゃない?!
「え…。これって夢じゃ?」
「覚えてないの?、酸欠で倒れたんだよ。」
 他の人たちも集まってきた。誰か助けて。いっそ夢のほうが良かった。

 その後私は一斉に誰にするかと問い詰められ、泣き出してしまった。泣きながらもやっぱり
普通の彦星様が一番だなと思っていた。



後書き。
 400ヒット記念と七夕記念。じゃあ1、2、300はどうしたと言われそうだが、気にしない。
ついでにフリー配布にでもしようかと思ったが貰ってくれる人はいるのか?最悪、衣鷺ゆうかに
無理矢理プレゼント。夢っぽくないけど、なかなか楽しく書けましたよ。もてすぎるのも大変って感じを
出したかった。満足。次はsecretaryを書こうかなー。

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