Dry?
特に理由も無く目が覚めてしまった。何となく隣に目を向けるとオレンジ頭の男、千石清純が眠って
いる。清純とこんな関係になってからどれくらい経ったのか見当もつかない。
最初に清純に惚れたのは多分、私。清純を好きになるまでは男の間を遊びまわっていたし、
学校でも噂になっていた。で、ある日いきなり清純が「ヤらせろ。」みたいな事を言い出した。
存在は知っていたけど話した事は無かったから焦った。が、何度か寝て、二人で遊びに行ったり
しているうちに清純が好きになった。けれど好きだとは言えない。私は今まで適当なことをしていたし
清純には彼女がいる。所詮私は遊びだ。眠っている清純の寝顔を適当に眺めてからもう一度眠りに
ついた。
もう一度私が目を覚ますとまだ清純は寝ていた。疲れているのかもしれない。清純を起こさないようにそーっと
起き上がってお風呂に向かう。
ゆっくりとお風呂につかって色々な事を考える。本当はこのままではいけないのも分かっている。
けれど止められない。とにかく何が何でも清純のそばに居たかった。たとえ体だけの関係でも。
とか考えてたらのぼせた。熱くてフラフラになりながら体を拭いてお風呂を上がった。
まだ清純は寝ていた。ドライヤーを使うと起こしてしまうかも知れないから丁寧に髪を拭く。
そのまま床にペタリと座り込む。体を冷ましながらいいかげんに告白しようか何て考える。大体は
考えるだけで終わるけど。
「ん…優紀ちゃん…。」
一瞬、体が凍りついた。彼女の名前を呼んでる。顔を覗き込むとこれ以上無いくらいに幸せそうな
顔で眠っている。目頭が熱くなる。分かってたはずなのに悲しい。とにかく、泣いちゃダメだと自分に
言い聞かせて服を着始める。服を着てホテル代を半分置いて帰ろうと思ったら手持ちが無い。
仕方が無いからメモと有り金全てをテーブルに置いて出ようとした。
「あれ…?帰んの?」
「あ、おはよ。うん、用事ができちゃったからさ、帰るね。ホテル代は明日返すから貸しといて。」
ギリギリで笑顔を作ってカバンを持って部屋を出ようとした。
「何で嘘つくの?用事なんか無いんじゃない?」
ビックリした。いきなり真剣な顔になった清純を見てたらまた泣きそうになったので急いで玄関まで
行く。
「質問に答えなきゃ返さない。」
追ってきた清純とドアの前で攻防戦を繰り広げる。開けようとしても清純が押さえるからビクともしない。
私は観念して清純の方を向いた。
「だって、彼女さんに悪いよ。寝言で呼んじゃうくらい好きなんでしょ?」
「別に彼女なんかいないよ。」
「は?じゃあ、優紀ちゃんって誰?」
「亜久津のお母さん。写真見る?」
とりあえず二人で部屋に戻って清純が持っていた写真を覗き込むと赤ちゃんと綺麗なお姉さんが写っていて
写真には『仁0歳』とか書いてあった。………。
「じゃあ、何で幸せそうな顔で眠ってたの?」
「亜久津をからかえる材料ができたと思って。」
何だそれは。一気に体から力が抜ける。
「彼女がいないならどうして彼女が居るって嘘ついたの?」
「それは…。はに本気になる男は嫌いって聞いたから…。」
「………。マジ?」
何だか分からないけど涙が出てきた。でも悲しい訳じゃないから私は声を上げて笑った。笑いながら
泣くのはパッと見たら奇妙かもしれない。
「あのねえ、私、清純が好きなんだけど。私と付き合ってよ。」
泣き笑いながら色気の無い告白をすると清純は満面の笑みを浮かべて返事の代わりと言わんばかりに
私をギュッと抱き締めた。
後書き。
何か恥ずかしい!何なの?!この青春物語は?!久しぶりに乙女入った夢を書いた気がする…。
いや、乙女の方から見ればこんなの序の口以下かもですけど。これもありがち。最近気付いたけど、
私の書くヒロインは泣くか寝るか風呂に入るかのどれかを必ずしてる気がする。タイトルは
Janne Da Arcからです。歌詞とほぼまんま。ラストは違うけど。あと半分くらいは実体験。
微妙に苦い過去ー。